重たい雲が頭の上に覆い被さるように天空を満たしている
強く吹き抜ける風に向かい立って体を大地につなぐ
対峙しているのは何にか
強い風に息が苦しい
自分の内側丹田と足の指先と裏を感じて立とうとする
思うようにならない呼吸の中に自分の息をつくる
対峙しているのは何になのか
地球をわたる自然の力の中に
やっと立っている
吹き飛ばされそうになるこの体が小さい
ただただそこにある
対峙しているのは何になのか
吹き飛ばされまいとする小さないのち
押し倒されそうになる風に向かい
なにもかもが遠くに吹き飛ばされていく
あのときの悲しみも苛立ちも
熱く震え立つ力はことも無く無力だ
対峙しているのは何なのか
自分の呼吸を静かに保つ
静かにいのちが立つように
やがて熱く震え立つ力が強い風と一緒に吹き去ると
静かなこころがただそこにある
ただただそこにあるいのちが立っている
「野分」のわき(広辞苑)のわけ(野分に同じ)
(野の草をわけて吹く意)二百十日・二百二十日前後に吹く暴風。台風。また、秋から初冬にかけて吹く強い風。
「野分」のわき(百科事典マイペディア)
<のわけ>とも。秋の台風の古い呼び名。秋草の野を吹き分ける意。二百十日、二百十日・二百二十日前後に吹く。
「野分」から「台風」になったとき
なにが変わったのだろうか
自然の営みの違いはあるのだろうか
言葉が変わるということがどんな影響を持ったのかを
「野分」を思いながら、じわじわと心の中に野分が吹くようだ