Today「今日」
伊藤比呂美訳 下田昌克画 福音館書店
この本にあるのは
ニュージーランドの子育て支援施設に貼ってあったよみ人知らずの詩
これを知ったのは、私が子育て支援について学んでいたときのことでした。私自身が子育ての中で家事と子育てをうまくできない自分に落ち込んだり自信をなくしていく日々を積み重ねていた経験があったので、この詩にであってどれだけほっとしたことか。。。はじめに知ったときには、A4サイズの紙に印刷されたことばのみのものでした。ニュージーランドでも自分と同じように悩みながら子育てをしているおかあさんがいることに驚きながらも、ほっとしたのです。自分だけではないのだと、それも地球の南半球のニュージーランドでも同じように感じている方がいることに母親としての共感と連帯感みたいなものを感じてしまいました。
当時私は、子育て支援の学びの中でカナダの「Nobody’s Perfect」という親支援プログラムを学ぶことにしていました。(「Nobody’s Perfect」プログラムについては別の機会に書きます)トロントに視察のため2回行ってきたのですが、その学びと平行してずうっとともにあったのがこの詩でした。カナダとニュージーランド、そして日本の子育てに悩みながら戸惑いながら懸命に自分と子どもに向き合い続けているおかあさんたちの存在を感じ続けることを私の中に大切に刻んだのがこの詩でした。
この詩をニュージーランドの子育て支援施設で見た方が日本に紹介し翻訳されたものがインターネットで広がったのです。その経過を本の終わりあるあとがきに読むことができます。当時は本当に瞬く間にひろがっていきました。この詩に共感した日本のおかあさんたちがたくさんいたのですね。
20013年2月に初版となっているこの本を手に取ったときに、なんともいえない安らぎを感じたのを覚えています。この本を作った福音館書店の想いが各ページの画と装丁に表れていました。大きさ、手触り、デザイン、画、すべてに優しさが感じられます。この本は、本そのものから、手にとったおかあさんたちに優しさが伝わるのだろうと、私には思えます。
一人でも多くのおかあさんが、この本に出会うことができますように。。。
「今日」の詩を紹介します。
今日
今日、
わたしはお皿を洗わなかった
ベッドはぐちゃぐちゃ
浸けといたおむつは
だんだんくさくなってきた
きのうこぼした食べかすが
床の上からわたしを見ている
窓ガラスはよごれすぎてアートみたい
雨が降るまでこのままだと思う
人に見られたら
なんていわれるか
ひどいねえとか、だらしないとか
今日一日、何をしていたの?とか
わたしは、
この子が眠るまで、
おっぱいをやっていた
わたしは、
この子が泣き止むまで、
ずっとだっこしていた
わたしは、
この子とかくれんぼした
わたしは、
この子のためにおもちゃを鳴らした、
それはきゅうっと鳴った
わたしは、
ぶらんこをゆすり、歌をうたった
わたしは、
この子に、していいことと
わるいことを、教えた
ほんとにいったい一日
何をしていたのかな
たいしたことはしなかったね、
たぶん、それはほんと
でもこう考えれば、
いいんじゃない?
今日一日、
わたしは
澄んだ目をした、
髪のふわふわな、
この子のために
すごく大切なことを
していたんだって
そしてもし、
そっちのほうがほんとうなら、
わたしはちゃーんとやったわけだ