私は、絵本からたくさんのことを学び教えられてきました。今思うと、絵本の読みきかせを学ぶことが自分自身のことや子育てをする親としての成長を支えてきてくれていたのだと思えます。
私自身の子ども時代には、絵本がそれほど身近ではありませんでした。外の自然の中で遊んでいたり、周りの人の話を聞いていたり、大人がやることを見て過ごしていることが大半でした。話を聞くことの楽しさはよく思い出すことができます。お話を聞くこと・昔話を語ることにつながる要素はその頃からありましたが、絵本との出会いは少なかったのでした。大きくなって学生だった頃に、ほんのちょっと絵本に興味を持ちましたが、あまり知らないままでした。(お話・昔話を語ることについては、別の機会に書きます。)
子どもを育てるようになってからです。子どもを育てるときに、絵本を知らない自分に気づき、絵本を学び始めました。初めての子育て、初めての場所で、手探りで毎日が過ぎていきました。まだ友達もいない場所で戸惑いながらの日々は、次第によくわからないことが重なっていくような不安がありました。一生懸命でしたが、とても不器用な親でした。そんな私を絵本との出会いが支え、その後の子育ての道筋を共に歩み続けてきたのでした。
近くの保育園の壁に手描きの「ぐりとぐら」がありました。その絵を見て、なぜかこころ惹かれる絵だなと思いましたが、私は何の絵かわからなかったのでした。絵本を学び、絵本の読みきかせを学ぶうちに、「ぐりとぐら」だとういうことを知りました。地域の公共の資料室に場所を借りて「お話の会」を始めました。自分自身と子どもたちに絵本の読みきかせをしながら、私自身が助けられ支えられ続けてきました。
絵本を読みきかせるということをとおして、私自身がとても大きなことを得ることができました。「絵本よみきかせ」冊子は、絵本の読みきかせから学び助けられたことを共有しお返ししたいとおもってつくりました。
このブログの内容は「絵本よみきかせ」につながるものです。私自身の体験から学んだ「絵本よみきかせ」のこころを一緒に考えることができたらと思っています。
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絵本の読みきかせは、読む人と、読んでもらう人が
一緒にその絵本をみながら
絵本の世界を共有して楽しむ時間をもっているという
幸せな体験をすることができます。
絵本をよんでもらうということは
絵本を自分によんでくれている人をまるごと感じている体験になります。
絵本を読みきかせるということは
絵本を通して、その人にむけて自分の想いを伝えるということをしているのです。
直接的な伝え方ではないのですが
自分が選んだ絵本は
自分自身の想いがどこかに反映されています
心を込めて選んだ絵本は
読みきかせをしたとき
読みきかせてもらったその人には
読んだ人の想いが
絵本を通して伝わります
絵本の絵と言葉を通して、
読んだ人が持っている全てがそこに乗って伝わっていきます
自分が読みきかせたいとおもって選ぶ絵本でないものを読むこともあります
絵本を読んでもらいたいと持ってくることがあります
この人に、この絵本をよんでもらいたいなと思って持ってくることがあります
字を読むことができない小さい子どもたちはもちろん
字を読むことができる子どもたちや大きな人たちでさえ
この人に、この絵本を読んでもらいたいなと思って持ってくることができるとしたら
そういう人がいるということ
その人と人のつながりの中にあるのだということをみてとることができます
よんでもらいたいと思った絵本を 自分に読んでくれる人がいる
「これよんで」といって持ってきた絵本を渡せる人がいる
自分のためによんでくれる人がいる
その人が自分に絵本を読んでくれているという体験をとおして
読む人と読んでもらう人が一緒につくる幸せな時間が積み重なっていきます
その幸せな時間の体験は
自分に絵本を読んでくれた人の存在の全てをとおして
人生の道のりをともに歩みます
絵本を読みきかせてもらった体験を持っている人は
人生のさまざまな場面で思い出します
絵本を思い出すのと同時に
そこにいた人が自分のために読んでくれていた全ての要素を含めてまるごと思い出します
それは
体験そのものがつくっている感覚が創りあげた言葉を越える生きる力につながります
人生につまずいたときに
苦しく悲しいときに
一人で困難な出来事に迷う日々に打ちのめされているとき
思いがけず、遙かな時を超えて
絵本を共にしたあのときのこえとことばとひかりと存在・・・
その場面そのものがもつメッセージにふっと何かを感じた、
こころのそこにあるどこかがつながり、すくわれたというはなしをたくさんきくことができます
そして、それだけではなく
うれしいしあわせな体験がこころのそこにあるからこそ
自分がだれかに読みきかせを大切にしたいと思って
絵本の世界を届けていらっしゃる方々もたくさんおいでになります
また一方では
絵本を別の方法で楽しむことが急速に広がっている現実があります
字が読めるようになったのだということから、
本は一人で読む物として捉えてしまい、読んでもらえなくなったり、
映像化されることで、映像の美しさや表現に委ねられてしまうなど、
多様なメディア機器を通して絵本や物語に出会える機会が増えています
絵本を一人で読むのは、自分のペースや時間の中で、自分自身の楽しみ方ができます
それもありです
映像化された作品としての鑑賞に出会いながら得られる楽しみ方もあります
それぞれの良さを大切にしながら
ですが
絵本を読みきかせる、読みきかせてもらうことをなくしていいということではないのです
それぞれが、全く別の体験をするものだということを知っていることが大切です
絵本を読みきかせるというほんのわずかな時間の体験は
じつは
ただ絵本を読むということを越えた豊かな時間と体験につながるのです
その豊かな体験をつくっているということになります
その体験が育てる力を、人として育んでいるという、大切なことをしているのです
読み方の上手下手を気にすることはありません
こころをこめて読んでいるという、そのことがいいのです
読んでくれているあなた自身がいることが大切でとても嬉しいのです
そうやって読んでもらいたいと、
絵本をつくっている方々が誠心誠意つくった絵本がたくさんあります
そういう絵本は、
自分で読むよりも読みきかせてもらったときに生き生きと語りかける絵と言葉を持っています
すこしずつですが
そんな豊かな絵本たちを紹介していきたいと思っています
(最後の写真は、「絵本よみきかせ」冊子のもくじです。)