風の神と子ども

 秋になると語りたくなるお話があります。その一つが、
『風の神と子ども』
「おはなしのろうそく9」(東京子ども図書館)に入っている日本の昔話です。
「日本昔話百選」稲田浩二・和子編著、三省堂刊より、「おはなしのろうそく」に入れられた、短いお話です。


 このお話を語る時、私は、子どもたちと一緒に風に乗って天の中をコウコウと飛び、柿やナシや栗がどっさりなっているところへ行きます。夜になって真っ暗な中を心細く歩き、ぼたぼた太ったでっかいばあさまにあったかい汁をごちそうになって北風に乗って村に帰ってくるのでした。
お話の流れとともに短い冒険をしながら、秋の空気・風を感じ、大人が忙しさに追われる時期を子どもたちが集まって遊び過ごしていた地域社会の姿を思い出すことができます。人が働き、子どもが群れて遊ぶ姿が、地域の中で当たり前にみられたことを思い出します。里の人々の生活の営みと、季節が変わっていく自然の力がもたらす豊かな収穫が、空気を動かし天を住処とする風の神々とともに、織りなし関わるこのお話から、ひやりとする自然の厳しさと暖かさを思います。
 光に向かって闇の中を身体を寄せ合ってごんごんといっぽいっぽ歩み続ける子どもたちの姿が、里で声をかぎりに捜し歩いた人々の姿とつながります。地球の姿は思いがけない様相で立ち現われますが、私は光に向かって歩き続ける、声をかぎりに求め続けることを、このお話を語る時に、語るたびごとに知ります。

おはなしを語る

 語りは、語り手自信がお話を自分自身のなかで生き生きとイメージすることができるようになることでお話しから多くのことを得ることになります。そして、語り手を通して語られたお話は、聞き手となる人や子どもたちと一緒に、共にその場をつくって、聞き手の中に届き、イメージが育ち始めます。言葉を通したイメージは、受け取ったその人の中でじっくりと成長するのです。
 このブログの中で、昔話などのお話をかたることについても書いていきます。

千畳敷カールの秋