「発達心理学」の授業が今年も始まりました。専門学校で「発達心理学」を学生さんたちと学ぶのは、私自身にとって大切な時間になりました。非常勤講師として授業を持っているのですが、一緒に学びながら、自分自身の理解も深まっていくのを感じています。
毎年、一回目の授業では「発達」という言葉について取り上げています。大学の教育学部で学んで仕事をして、しばらくたってから、ちゃんと学びなおす必要を感じて、「発達」について、田中昌人さんが講師をしてくださった発達講座に何年も通いました。そこで学んだ「発達」という言葉の意味は、私を原点に返らせてくれます。
「発達」Development
Developmentという言葉が日本に入ってきたとき、この言葉を日本語にどう訳すのかということで色々な議論があったという話を聴いたのでした。辞書によるとDevelopmentは①発達、成育、進展、発展、開発、拡張…(OBUNSHA’S Essential ENGLISH-JAPANESE DICTIONARYから)とあります。Developmentは社会の発展、開発などに使われる言葉でもあります。
たしか、田中昌人さんはこの「発達」という言葉を、「発」「達」のそれぞれの漢字がもつ意味を通して教えたくださったのでした。そこから学んだことをもとに、今、私は学生さんと一緒に考えています。
「発」「達」
「発」がつく二字熟語はどんなものがあるでしょうか?
思い付く熟語をあげてみましょう。
・発信・発育・発表・発見・出発・発足・発言・発明・発散・・・・・
たくさんあります。これらの熟語に共通するイメージはどんな感じのものがあるでしょうか?
なにか、ある時点、ある起点、ある内側に内在しているものが動き出す、または、そこからある方向に出ていく、表に現れる、などのイメージがあるように思います。“無い”のではなくて、ちゃんと“ある”ものが充実していくさま、準備が整い動き出そうとするさまが見えてきます。
いのちが持っているそれ自身の力が現れてくる、現され動き出すことができる力を感じさせる「発」という文字がもつイメージがあります。
「達」という文字は、「土」「羊」を乗せています。「友達」「私達」のようにみな乗せています。意味は、「いたる・とどく・行きつく・成し遂げる・つたえる・・・あまねく・全部にゆきとどく・みな・・・」(三省堂、新漢和中辞典より)
「土」の中にある小さな小さなものたちも、種のように小さないのちのもとたちも
「羊」のように力が弱いとみられることがあるようないのちたちも
すべての、どんないのちたちもが、みな それぞれにもっているいのちの力があります。
「発達」はどんなに小さな、どんなに弱くて力がないと思われているような存在であっても
すべてのいのちがもっている そのいのちの力が それぞれ自身に内在しているいのちの力を充分に生きていく過程で成し遂げとどけられるようにできるのを見ていくことなのだと教えてくれています。
いのちはひとつとして同じではない
ひとつひとつが尊いかけがえないいのち
いのちは一つとして同じいのちはありません。みなそれぞれ独自のかけがえないいのちを生きています。いのちは個別の道筋をたどり、独自の個性を持っているからこそ豊かな文化や世界を人類はつくってきましたし、つくっていくことができます。人類の可能性も豊かさもそこにあります。そして、また、発達心理学では、人の力、一人一人の力を理解して尊重するがゆえに、発達の道筋にある法則性をみつけていきます。いのちの力が一人一人のなかに十分にいたり成し遂げることができるように、何をしたらいいかを知る為に、理解する力を得ようとするのが「発達」を学ぶことになります。
さあ、発達心理学を一緒に学んでいく時間が始まります。